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フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

フェルマーの最終定理 (新潮文庫)


文庫化してたので買ってみた。

これは熱い。

正直、ここまでハマるとは思わなかった。

面白さのベクトルとしてはプロジェクトX に近い。その本質は数々の泥臭い人間ドラマ。ほんとによく調べてあるなぁ。

自分の中の幾多のヒーローが、生き生きと描かれている様が実に小気味よい。あらゆる分野の偉人(すげぇオールスターっぷり)の仕事と、あらゆる数学上の事件の歴史が組み込まれ、一つに織り込まれていく様はまさに絶頂モノ。

ここでは問題のパズルとしてのシンプルさ・奥深さも、358年という歴史も、登場人物の天才性も、背景にある数学全体に関わる問題(楕円とモジュラーの対応関係とか)の重みも、すべてこの壮大な人間ドラマを彩るためのスパイスとして絶妙に機能している。

定理そのものにはドラマは無い。しかし背景には歴史が、名だたる天才達の濃密で鮮やかな、あまりに人間くさい人生の積み重ねがある。

数学がここまで人を動かせるのだな。今自分が片足のつま先を浸している世界は、こんなにも魅力的なモノなんだな。そういったあれこれを見せつけてくれる作品でした。